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テーマ型調査
「みらリポ2018」

プロジェクト編02
みつばちを追いかけ、「地元愛」が育つ。

生き物との関わりを通じて、 地域を知り、その魅力に気づいていく。
2018/11/12 カテゴリ:
プロジェクト編
自然や生き物と関わる学びの中で、地域の魅力に気づき、地域の人々と関わって、地域への愛着が育まれる。自然や生き物と関わる学びの中で、地域の魅力に気づき、地域の人々と関わって、地域への愛着が育まれる。
自然や生き物と関わる学びの中で、地域の魅力に気づき、地域の人々と関わって、地域への愛着が育まれる。

自然や生き物と関わる学びの中で、地域の魅力に気づき、地域の人々と関わって、地域への愛着が育まれる。

野菜や果物、植物を育てると、地元愛が深まる?

2004年度に文部科学省によって全国の自治体や学校を対象に「コミュニティ・スクール」が制定されるなど、学校と地域の連携は「地域に開かれた学校づくり」、「地域全体で学校を支援する体制の構築」といった観点から教育改革の柱のひとつとして推進されてきました。子どもたちが21世紀を生きる力を育むにあたって、「学校と地域との関わり」は欠かせないポイントとなりそうです(学校と地域との関わりについては、博報財団こども研究所のみらリポ2017「地域を動かす、子どものパワー!」もぜひご参照ください)。

では、今回のプロジェクトのような「自然や生き物と関わる学び」は、子どもたちと地域との関係に何か変化をもたらすでしょうか?

この問いへのヒントとして、青少年教育振興機構による2012年版『青少年の体験活動等に関する実態調査』を見てみましょう。図1は「自然体験と『国や地域の政治や選挙について関心がある』の関係」を示しています。このグラフから明らかなように、自然体験が豊富な子ほど、自分たちの住む社会(国・地域)に対して高い関心を持っています。ここでの「自然体験」は学校の活動に限っていませんが、自然との関わりを持つことが子どもたちの社会・地域への興味関心につながっていることがうかがえます。

図1

さらにデータを見てみましょう。図2・3は、私たち博報財団こども研究所が実施した定量調査の結果です。この数値を見ると、「生活範囲により豊かな自然がある子ども」や「自然との関わりが深い子ども」のほうが、そうでない子どもたちよりも、自分が住む地域に対しての愛着=「地域愛」や、将来も住み続けたいという気持ち=「居住継続意向」が強いことがわかります。

どうやら自然や生き物について学びを深めることと、地元に対する愛着とには、何らかの相関関係がありそうです。

図2

「自然や生き物との関わりが、地域への想いへつながる」としたら、そこにはどのようなメカニズムが働いているのでしょうか。大岡小学校との共同研究プロジェクトで私たちが見聞きした子どもたちの変化から、考えてみたいと思います。

屋上に上がってみるだけで、地域の豊かさが見えてきた。

そもそも「はちブンブンプロジェクト」は、「ミツバチを育て、蜂蜜を得る活動を通して、地域環境を見つめ直したり、地域の人々との関わりを模索したりし、(中略) 地域の人同士を結ぶような、地域の活性化に向けた活動に参画していくことができることを理解する」(鈴木先生の授業計画案より)という構想からスタートしました。6年生は小学校最後の年。6年間お世話になった地域のみなさんに、自分たちならではの恩返しがしたい。そんな想いからはじまったプロジェクトなのです。

では実際に、子どもたちと地域とのつながりはどのように深まっていったのでしょうか?

例えば巣箱のお世話のために屋上へ出るだけでも、知らなかった地域の一面に出会います。自分たちの街は住宅街だと思っていたけれど、屋上から見てみると、意外と緑がいっぱいある......そんな気づきが生まれます。

ミツバチがどの花から蜜を採ってきたのかを探る「蜜源調査」も大きな学びの機会になりました。「行動範囲が巣から半径2km圏内」というミツバチの生態を学習した子どもたちは、自分たちの足で学校から2kmの範囲にどんな花があるかの調査へ出かけました。ふだん見過ごしていた草花に目を向ける、高台から地域を眺める、花を育てている地域の人と語る......。蜜源調査の後ではこのような声がありました。「人の家の中の花壇も道端に咲いている花も、思ったよりあって驚いた」「大岡は田舎ではない便利な街だけれど、自然もあるから、けっこういい街なんだな」。

写真3
蜜源調査の結果を1枚の地図にまとめる。想像していたよりもたくさんの自然があることに気づく。この調査が、自分たちが住む地域への見方を変えるきっかけとなった。
写真4
蜜源調査は公園や道端だけでなく、個人宅も対象に。庭のあるお宅を訪問し、自分たちの取り組みと目的を説明する子どもたち。地域社会へ出て人と関わる経験は普段の学習ではなかなか得られないもの。

今回のプロジェクトを通して、大岡の街に対するイメージや気持ちがどのように変わったかをビジュアルカードを使って子どもたちに振り返ってもらったところ、「老朽化した建物が多いイメージ」から「豊富な自然」「活動で協力してくださる地域の方々の温かい心」へ、あるいは、「自分たちと大岡の自然がきっぱり分かれている」「大岡の自然に関心を持っていなかった」から「その場所だけの特徴がある」「自然について調べたことで、いろいろな分野のことを知ることができた」へ、地域に対する気持ちを一新させていったことが見てとれました。

写真7
今回のプロジェクトを通して、大岡の街に対するイメージや気持ちがどのように変わったかをビジュアルカードを使って振り返ってもらった。多くの子どもたちが、街に対しより豊かで親しみのあるイメージを抱くようになった。

自然や生き物を学ぶ過程で、いつもとは異なる視点で歩き、見て、語り合うことによって、街が本来持っていた豊かさに気づく。そんな構図が見えてきました。

みつばちをきっかけに育む、子どもと地域の「濃い関わり」。

写真4

もうひとつ忘れてはならない視点が、自然や生き物を学ぶ過程で、地域の人たちと気づきや感動を共有し、お互いに学び合う機会が多く得られるという点です。

例えば、活動開始時。小学校の屋上に巣箱を設けることは、周辺にミツバチが集まることにつながります。そのため、子どもたちが自分たち自身で町内会長さんや地域に住むみなさんに理解と協力を求める説明をしに回ることから活動はスタートしたのです。

学習を進め、ミツバチや自然との関わりを深めるにしたがって、「自分たちが体験した感動を地域の人たちに伝えたい!」「自分たちが発見した地域の豊かさを、地域の人たちとも共有したい!」という気持ちが、子どもたちの中でどんどん湧き上がります。

そうして、高い熱量を持って地域の人たちを招き、交流するイベントを企画・実施することで、これまでにない密度の濃さで地域の人たちと関わることができました。

写真5
写真6
イベントを通して子どもたちは、保護者の方々だけでなく、さまざまな地域の人たちとの交流を行った。この経験もまた、地域の新しい一面、これまで知らなかった一面を知るきっかけとなった。

子どもたちの言葉です。「前はインタビューで話すことはあったけど、自分から行こうとはせず、あまり話しませんでした。けれど、ハチを通して、町内会長さんのお宅を回ってハチのことを話したり、マンションの管理人さんに話して、掲示板に貼らせていただいたりして自分から行動できるようになりました」「これまではそんなに地域の人と関わるってことがなくて。地域の人との関わりとかがメインになったのは今年がはじめてで。ハチの世話(そのもの)というよりは地域の人とのつながりを大切にしてきたので、そこが1年間の中では印象的に残っている」。 自然や生き物を学ぶことは、それらを取り巻く地域について、これまでにない目線でとらえ、これまでにない動線で探索することにつながり、いままで見過ごしてしまっていた地域の豊かさや美しさに気づくことにつながります。

また、そうして培った自然や生き物、地域の豊かさや美しさへの驚きや感動は、地域の人々と関わるにあたっての熱意や真剣さにつながっていきます。 子どもが地域を学び、地域の人々と密度濃く関わり、地元愛を育む。そうした動きの原動力のひとつとして、自然や生き物と関わる学びを位置づけることができそうです。

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