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テーマ型調査
「みらリポ2018」

プロジェクト編01
「いのち」が導く「知りたい」への思い。

生き物を相手にしたリアルな体験・知識・感動。
そこから育まれる子どもたちの「探究心」。
2018/10/25 カテゴリ:
プロジェクト編
「知識」×「体験」×「感動」の3要素が組み合わさることで、子どもたちの「探究心」が伸びる。

「知識」×「体験」×「感動」の3要素が組み合わさることで、子どもたちの「探究心」が伸びる。

テストの成績は良いけれど、科学に興味関心の薄い日本の子どもたち......。

OECDが進めている国際的な生徒の学習到達度調査(PISA)2015年度の結果によると、日本の子どもたちの「科学的リテラシー」は世界でもトップレベルである一方、「科学への興味関心」は低いことがわかります(図1)。

文部科学省は理数の力を育むため「繰り返し学習(実生活での実践)」と「観察・実験」の充実を呼びかけ、平成30年度の一部改訂では「日常生活等から問題を見いだす活動」や「見通しをもった観察・実験」、「データ収集・分析」など、子どもの主体性や探究力を重視した改善提案がなされています。

図1

では、これらの方針のもと実際の授業では、どのようにすれば、子どもたちの内に潜む理数科への興味関心を引き出すことができるのでしょうか。

そのヒントのひとつとなるのが、今回の「はちブンブンプロジェクト」です。子どもが「生き物」を育てることを通して得られた知的感動体験が、さまざまな理数科の探究学習へとつながったプロセスを見ていきます。

小さなみつばちからはじまる、知識・体験・感動の深まり。

本プロジェクトは、ミツバチを学校の屋上で飼うという新しい体験からはじまりました。そのためには、地域の人に養蜂について説明する必要があり、まず子ども自身がハチの正しい知識を身につけなければいけません。「ハチの飛距離は半径2km以内であること」「一生に1回しか刺さないこと」「一生をかけて採れるハチミツは1匹あたりティースプーン1杯分であること」......など。さらに子どもたちは、毎週定期的にミツバチのお世話を続ける中で、ミツバチが水を飲む様子やスズメバチと戦う様子など、生きる姿を目の当たりにします。当初「怖い」存在だったミツバチは、いつしか「かわいい」「かっこいい」存在へと変化していきます(図2)。そして生き物の生態系や「生きるとは何か」に意識を傾けはじめた子どもたちは、そこからさらに探究を深めていきます。ハチの巣=ハニカム構造の由来を分析・考察した子ども、自動給水機能付き水飲み場を自作した子ども、ハチの標本作りに励んだ子どもなど、ハチとの共同生活を軸に実に多様なアプローチが見られました。

図1

そして、そのような知識と体験が積み重なり、形となりはじめた9月4日。はじめての採蜜の日です。キラキラと光りながら流れ出るハチミツを見て、子どもたちの歓声は止みません。「命の輝き!」「ダイヤモンド、宝石だ!」「自分たちが育てたハチが採ってきた蜜だから。これは一緒に頑張った証。すごく達成感があった!」。このときの強烈な感動が、さらに子どもたちの知的探究を推し進めます。

図3

子どもの探究心を育むもの。

写真4

今回のプロジェクトで子どもたちの自発的な探究学習を支えたのは、圧倒的なリアリティを伴う、知識・体験・感動という3要素の掛け合わせでした。単に新しい知識が呼び水となったのではなく、日々ハチと触れ合う中で得た実体験の積み重ねと、「かわいい」「すごい!」などの感情・感動が、ミツバチの生態さらには自然科学全般について「もっと知りたい」「不思議を解き明かしたい」という知的好奇心へつながったのです。これは、前ページの図3にあるように、学校で生き物の世話をする機会が多い子は、その機会がない子に比べて、「学習意欲や探究心の高まり」を強く実感している、という調査結果を裏づけるものではないでしょうか。 机上の調査や知識の習得だけでは生まれないもの、それが今回のプロジェクトにはありました。試行錯誤しながらも状況に合わせて臨機応変に対応し、体験を重ねていくこと。どこまでも未知で思いがけない反応をする自然や生き物によって心が揺り動かされること。その感動を確かな結果につなげようとさらなる分析や考察を繰り返すこと。そんな「知識×体験×感動→探究」の図式が浮かび上がります。

写真5
左/自ら構造を考え、独自の水飲み場をつくる。右/遠心分離機で、巣枠からハチミツを取り出す作業。

「未知の事柄への興味(好奇心)」「考える力(洞察力、発想力、論理力)」の向上は、先進的な理数教育を施すスーパーサイエンススクール(SSH、高等学校段階)活動の効果としても認められています。こと小学生の学びにおいては、この一歩手前に「感動」というトリガーを用意することが、その後の学びを円滑に進めるためには欠かせないのかもしれません。

写真6
左/自分たちで主体的にハチの生態を学び、知識を深めていった子どもたち。「はじめて自分から図書館に行った」と言う子も。右/夏休みの自由研究では、ハチの生態や身の回りの花や自然などについて、多くの子どもたちが楽しみながら調査・発表を行った。
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