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テーマ型調査
「みらリポ2018」

プロジェクト編インタビュー 嶋野道弘先生

2018/12/10 カテゴリ:
プロジェクト編インタビュー
前 文教大学教授嶋野道弘先生みつばちとの学びから子どもたちが育んだのは、
自分を「より望ましい自分」に変えていく力。
前 文教大学教授嶋野道弘先生

みつばちとの学びから子どもたちが育んだのは、 自分を「より望ましい自分」に変えていく力。

「はちブンブンプロジェクト」に取り組む子どもたちの姿を見ていると、中央教育審議会が検討してきた学習指導要領改訂の「日本版カリキュラム・デザインのための概念」が頭をよぎりました。「はちブンブンプロジェクトは、その概念を実証するものだ」と。2020年度から実施予定の学習指導要領では、新しい時代へ向けて育成すべき資質・能力の3つの柱を、次のように据えています。「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」「何を知っているか、何ができるか」「知っていること・できることをどう使うか」。それら3つの柱を本プロジェクトがどう実証していたか、私の見解を述べてみます。

ひとつ目の柱の「どのように社会・世界と関わり、よりよい人生を送るか」については、プロジェクトのフィールドが校区を中心にした「地域」であることで実証されます。地域が学習の場になっているため、自ずと地域社会と関わるのです。養蜂に詳しい大人から養蜂技術を習ったり、蜜源調査で花のある家庭を訪ねたり、イベントに地域住民を招くなど、頻繁に地域と関わることで、教室では成立しない学びが実現しました。また、ミツバチの世界に足を踏み入れたことで、生態の魅力や可愛らしさを感じるようになり、自然という世界への認識を高めていきました。

次に、「何を知っているか、何ができるか」。子どもたちは養蜂に挑戦し、ミツバチに関する知識を増やすうちに、はじめは怖いと感じていたミツバチに対してやさしく、寛容に接するようになりました。また、ミツバチをピンセットで挟む様子や採れたハチミツを口全体で味わう様子も見てとれますが、これは「体で知る」「体でできるようになる」体験だったと言えます。頭の知識だけではなく「身体知」の体得も見られる授業です。

写真1

3つ目は、「知っていること・できることをどう使うか」。子どもたちは蜜源調査を行い、地域の花のある場所を記した地図を作成し、考察します。結果、例えば、「採れたハチミツの量から計算すると地域には20万輪以上の花が咲いているのではないか」という推測値を、イベントに来場した地域の人たちに説明しました。大人が真剣な表情で耳を傾けていたのが印象的で、子どもたちを頼もしく感じました。また、来場者にミツバチの生態を伝える方法を考えることで表現力も養いました。Googleストリートビューにアニメーションを加え、地域の花の咲く場所を示す動画を作成した男子児童は、「将来、映像作家になりたい」と目を輝かせていました。本プロジェクトが人生を考えるきっかけにもなったのです。

この3つの柱を、学び方としてつなぐのが「アクティブ・ラーニング」です。主体的かつ対話的に、なぜこのプロジェクトを行うかという目的を意識しながら学びを深めていくことに成功しました。ある女子児童は、ミツバチも水を飲むことを知り、自分の意志で校舎のベランダにミツバチの水飲み場をつくりました。これも、アクティブ・ラーニングの成果。「自己変革」と言えば大仰ですが、そんなふうにして子どもはより望ましい自分に変わっていくのです。

アクティブラーニング概念図

そして周囲のことを認識することも大切ですが、自分自身の変化を感じ取ることも重要です。以前の自分と比べて「花を詳しく見るようになった」と言った女子児童がいましたが、それは、「花を詳しく見るようになった自分、を感じているもうひとりの自分」が存在しているから言えること。つまり、自分で自分を客観視できる「メタ(高次の)認知能力」が育った証なのです。社会を見ている自分と、そう見る自分を見ている自分。その2つの自分を認識することが、さらなる成長や自己変革の力へつながっていくのではないでしょうか。

嶋野道弘先生プロフィール

しまのみちひろ/元文部科学省初等中等教育局主任視学官。元日本生活科・総合的学習教育学会会長。著書に『学びの哲学ー「学び合い」が実現する究極の授業』(東洋館出版社)など。
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