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テーマ型調査
「みらリポ2017」

プロジェクト編08
子どものパワーが発現する学び舎づくり。

元文教大学教授 嶋野道弘先生
2017/10/06 カテゴリ:
プロジェクト編
しまのみちひろ/中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会生活・総合的な学習の時間専門部会委員。著書に『これからの生活・総合̶知識基盤社会における能力の育成と求められる教師力』(共編著、東洋館出版社)など。

COLUMN

子どもは、人や社会及び自然と関わり合いながら知を構築し、自己を形成し、個性を伸長・開花させ、一人前の人間として発達・成長していく。実際の社会や生活の場で生きて働く本物の知・情・意(人間の持つ3つの心的要素)というものは、時間をかけた現実のヒト・モノ・コトと関わる中で生まれ、育っていく。実社会・実生活の生き生きとした具体的な事実との関わり合いを通して立ち上がる知・情・意こそ子どもの生きる力になっていく。

そうした力を身に付けさせるには、「地域を学校、地域を先生」にして、地域のヒト・モノ・コトと直接関わり合って学ぶ総合的な学習の学び方が必要になる。地域に生活する人や地域の事物・現象はそれぞれに固有で多様であるが、それらは誰にとっても公平に存在している。同時にそれらは、関わる者にとってのみ応えてくれる独自な存在でもある。地域が学校になるか、地域を先生にできるか、ということは、地域のヒト・モノ・コトにどれだけ関わっていけるかが「鍵」である。「巴川そうじ大会」を企画して川と関わる子どもの学びは広くて深い。

「(川を)きれいにするといっても、きれいにすると汚くなる」「だからきれいを保つんだよ。俺たちがやらないとはじまらない」。そうじ大会を企画する過程での子どもの会話だ。「巴川もきれいになったけど、みなさんの心が一番きれいになったと思います」。地域の人が参加した掃除大会終了時の子ども代表の挨拶だ。掃除についての考えが具体性を増して理解が深まった。

子どもは友と協働することを通して、自らよりよい自分を創り上げていく。それは脱皮をするようでもあり、閉じ込められていた本来の自分が解放されて現れ出たようでもある。「(自分は)意見を言えないタイプだからみんなに任せちゃう。声が大きくて、頭が良くて、意見がちゃんと言えるような子にちょっと任せちゃう」とつぶやくみきさん。自分の任務を果たすことをきっかけに、準備や本番ではグループを先導し、リーダーシップを発揮する自分に変容していた。『自分はそうじ大会に関係して役に立つことができる』という自己効力感を強く感じ取ったのだろう。こうした自己形成・自己変革の姿は他の子どもにも見ることができる。

「やばいよ、もう汚くなっている。エー、ショック」。大成功だったそうじ大会の翌週、再びゴミがある現実に直面した子どもたちは強い衝撃を受ける。そうじ大会を成功させた子どもたちにとって、この事実は他人事ではない。事象をとらえる感性や問題意識が揺さぶられて取り組みがますます真剣になる。「自分たちの取り組みを地域の多くの人に知らせよう」と新聞に着目して、折り込みのチラシの制作に取りかかる。取り組みを自分事にした子どもたちは、想定外のことが起きたとしても能動的に立ち向かっていく。それは、大人が大人になったいま、(子ども時代には持っていたが)どこかにしまい込んでしまったか、忘れ去ってしまったかしている子ども固有の姿である。

子どもが地域のヒト・モノ・コトと直接関わって学ぶ学習では、そこでの子どもの姿を真摯に受け止めて立ち上がる大人の存在が際立つのも特色だ。「子どもに誘われて参加しました」という祖母。「子どもがやっているのに大人が見て見ないふりはできない」と語る地域住民。子どもの企画に賛同して会社ぐるみで参加する社員等々。ゴミ袋に貼るシールの印刷を地域の印刷会社にお願いに行った子どもたちは、そこで「予算、期限、契約」などについて学ぶ。

心ある地域の人々の協力は子どもにとって大きな励みとなり、自信や信頼、地域への愛着などを生み出す。子どもは親や子どもを取り巻く大人の影響を受けて育つが、大人は子どもの影響を受けて上質な地域を創り出す。定量調査では、学校と地域が関わることの影響について、「社会について学ぶよい機会になる」「生きていくために必要な力が高まる」「世代を超えたつながりが生まれる」「地域全体の雰囲気や環境がよくなる」という声が多い。

そもそも、子どもとはどのような存在なのか。私たちは、そのときの子どもの状態(実態)を把握するとともに、子どもの本質(実体)に目を向ける必要がある。

子どもは「なる」力を持っている。「なる」だけでなく、自分を何者かに「する」力を持っている。ぼんやりとなるのではなく、「なりたい」という思いや願いを持って、「自分でする」ことによってなっていくことができる。

大人の目で子どもを見るとき、子どもは未熟で不完全のようであるが、子どもの世界に分け入って見れば、子どもが子どもであるがゆえに持っている自分自身や物事を変えていく強いパワーに気づくはずである。大人は子どもの力を信じ、子どものパワーが発現し、可能性が開花・結実する学びの場を創ることに力を尽くしたいものである。

グループワークでは、さまざまなフレームワークを使用。写真は「ピラミッド法」。多様なアイデアを分類・整理しながら、ベストのアイデアまで絞っていく。

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