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テーマ型調査
「みらリポ2017」

プロジェクト編07
「地元をこんなに身近に感じたのは今日が初めて。」

地域が子どもを育てるんじゃない。子どもが地域を育てるんだ!
2017/09/12 カテゴリ:
プロジェクト編
データ

「コミュニティ・スクール」で、学校と地域はどう変わる?

ここでは、「コミュニティ・スクール」について、注目してみたいと思います。「コミュニティ・スクール」は「学校運営協議会」という協議会を設置している学校のことを指します。地域住民や保護者が委員となるこの協議会は、①校長が作成する学校運営の基本方針の承認を行う、②学校運営について教育委員会または校長に意見を述べることができる、③教職員の任用に関して教育委員会に意見を述べることができる、という3つの機能を有します。こうした機能を持つことで、『学校と保護者や地域の皆さんがともに知恵を出し合い、学校運営に意見を反映させることで、一緒に協働しながら子供たちの豊かな成長を支え「地域とともにある学校づくり」を進める』(文部科学省ウェブサイトより)ことが可能になるとされています。2004年度より文部科学省が全国の自治体や学校を対象に指定してきた結果、その数は増え続け、2016年4月1日現在で全国2,806校がコミュニティ・スクールに指定されています。 昨今注目を集めているコミュニティ・スクールですが、具体的にはどのように地域と学校が関わり、どのような変化が生まれているのでしょうか?

「地方創生」の鍵は、学校!? 「地域への愛着」に約1.4倍もの差が!

前述の疑問に関して、博報財団こども研究所が全国の子ども・教員・保護者を対象に行った定量調査で得られた結果から、コミュニティ・スクールの実態と可能性を知ることができるかもしれません。図7のグラフをご覧ください。

図7 出典:博報財団こども研究所「こどもと地域調査」2016年
図7

左側の2つのグラフは、子どもがふだんどのように地域と関わっているかについて示しています。「地域と関わり学ぶ子ども」と「地域と関わりなく学ぶ子ども」とを比較してみると、「近所に住んでいる大人と話す」といった日常的な地域との関わりが、「地域と関わり学ぶ子ども」のほうが深いことがわかります。さらに子どもたちのそのような状況が保護者にも影響を与えるのか、右側2つのグラフを見ると、コミュニティ・スクールに通う子どもを持つ保護者は、一般の小学校の保護者よりも、地域の人や地域の行事と関わる頻度が高くなるという結果が顕著に出ています。  さらに特筆すべきは、図8のグラフです。コミュニティ・スクールに通う子どもを持つ保護者のほうが、自分がいま住んでいる地域に対する愛着が高く、今後もずっと住み続けたいと思っていることが、調査結果から読み取れます。

図8 出典:博報財団こども研究所「こどもと地域調査」2016年
図8

つまり、子どもが地域と関わる頻度が高く、深く地域と交流を持っていれば、その保護者も、地域に対する関心や交流の度合いなどが高くなり地域への愛着も増す、ということ。人は関わり合って生きるもの。そこに住む人たち同士の交流が広がりお互いを知る機会が増えれば、その地域に対する関心や愛情が深まるのは当然だと言えます。地域のつながりを強くし、元気な地元をつくろうとするのであれば、実は「学校」の存在が重要な鍵になってくるのかもしれません。

実践

学校を取り巻く大人の関わりが高まれば、子どもたちが変わり、地域も変わってくる。

共同研究プロジェクトに地域のみなさんがどのように関わり、そこでどんなことを感じたのかを見ていきましょう。

「そうじ大会」の実現に向けて、子どもたちは、オリジナルのゴミ袋を制作するためにシール印刷会社や包装資材販売会社などの地元の企業に協力を得たり、大会を宣伝するためのポスターを地元の商店街や公共施設に貼らせていただいたり、自治会長をはじめとする住民の方々に大会の告知を回していただいたり、と地元の多くの方々と関わり合いながら、準備を進めていきました。

たくさんの地域住民の方々にご協力いただき、アドバイスや支援を受けた。写真は江尻地区自治会長の鈴木栄さん。授業に何度も来て、子どもの質問にも答えていた。

大会本番の「そうじ」は、子どもたちのアイデアで、ただ清掃をするだけではなく「チームを組んで、地域のいろいろな場所を巡り、地元のことを知ったり地元の人と関わったりするミッションをクリアして、ビンゴを埋めていく形式の"江尻流そうじ"」で行われました。参加者は、清掃に取り組みながら、地域のいろいろな人と交流したり、地域について学んだりといったことも楽しめたようです。

地域の大人を巻き込んで開催されたそうじ大会。「ただのボランティアとは違う。みんなが楽しめるように、という発想が素晴らしい」などの感想が。
地元企業も参同し、団体で参加。

結果として、参加者アンケートを見てみると、「今回のそうじ大会は巴川を大切にすることにつながったか?」という問いに対して「とてもあてはまる・あてはまる」が合わせて98%(図9)。後ほど紹介するように、子どもたちのがんばりを評価するコメント、地域への想いを新たにしたというコメントも数多く寄せられました。「地元の川・巴川を大切にしようという気持ちを地域の人々に伝えたい」という授業で掲げたテーマについては、十分に達成されたようです。

図9 出典:江尻流そうじ大会参加者アンケート
図9
考察

「3つの固定観念」を手放してみよう。

私たち大人の多くは、卒業すると学校から疎遠になってしまいます。そして、いつのまにか、次のような3つの固定観念にとらわれてしまってはいないでしょうか。「学校は自分とは関係のないところで、教育は教員や保護者といった専門家や当事者が行うものだ」「学習は、教室の中で行われるものだ」「学校で学ぶのは、子どもたちだ」

清水江尻小のようなコミュニティ・スクールの取り組み、地域と関わり学びをつくろうとする取り組みは、この3つの固定観念を変えるチャレンジだと言えるでしょう。

学校が地域・社会にひらかれ、子どもたちが学校の外に出て、授業が行われる。地元の商店街や公共施設、企業とそこに所属する社会人、自治会をはじめとする地域住民など、教員以外の大人が、学校のウチとソトという区別を越えて交流し、学びの場づくりに関わる。学校は地域・社会に生きるすべての人に関係のある場所で、私たち一人ひとりが学びの場を共創する当事者だ、と考えてみる。

そうしてつくられた学びの場で、子どもたちは変化していく。REPORT-1、REPORT-3、 REPORT-4などで紹介した子どもの成長は、「地域の川を大切に、きれいにするには?」という現実に存在する生々しい問いに対して、地域の人々・多様な人々と関わり合って学んだからこそ、得られたものだと言えるでしょう。学習・成長は、教室の中、学校の中だけで行われるものではなく、地元の川や海や山、公園や図書館、商店街や企業のオフィスなど、あらゆる場所で行われるものなのです。

参加者からは「子どもたちがやっているのに、大人がやらないわけにはいかない」「子どもたちが変われば、保護者も地域もすべて変わってくる」という声も。

そして、変化・成長する子どもたちと関わり合う中で、大人たちも変わっていきます。たとえば、そうじ大会の参加者にお話をうかがうと、「町の中が意外とキレイだった。ペットボトルやカンも落ちていなくて」「自分たちの町を回るという機会はなかなかないので、そのきっかけになってよかった」「掃除も大事だけど、ふだん話をしないようなおじさんおばさんが来ていて、話ができたのがよかった」と、自分たちの住む町のことを改めて知ったり、住民同士でお互いを知り合ったりといったことを評価する声をいただきました。子どもをきっかけに集まり、交流する。地域の見過ごしていた魅力を再発見し、前向きな想いを育てていく。そんなプロセスを体験していくうちに、地域への愛着が増し、ここに住み続けたいという想いが増していくと、私たちは考えます。 そう、学校で学ぶのは、子どもたちだけじゃない。地域も、大人も、学校で学ぶ。そのような場所として、学校をとらえ直すことができるのではないでしょうか。

学校と社会がつながり、教員以外の大人が学びの場づくりに関わると、子どもが変わり、大人自身と地域も変わっていく。
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