メニューボタン
  1. HOME
  2. 研究テーマ一覧
  3. テーマ型調査「みらリポ2017」
  4. プロジェクト編03「みんなも教えてください。」
テーマ型調査
「みらリポ2017」

プロジェクト編03
「みんなも教えてください。」

自分ひとりではできないことだって、仲間を信頼し、協力すれば実現できる!
2017/06/22 カテゴリ:
プロジェクト編
データ

他者を理解し、共感する力の向上は、21世紀の子どもたちに必須。

OECDは、相互につながった世界を生きる21世紀の子どもたちに必要な力として、以下3つの「キー・コンピテンシー」を掲げています。①社会・文化的、技術的ツールを相互作用的に活用する能力(個人と社会との相互関係)②多様な社会グループにおける人間関係形成能力(自己と他者との相互関係)③自律的に行動する能力(個人の自律性と主体性)。この中で2番目のコンピテンシーに注目すると、より具体的には「他者とよい関係を築く力」「チームを組んで協同・協調する力」「対立を調整し、解決する力」となっています。

また元マサチューセッツ工科大学教授のダニエル・キム氏が提唱する「組織の成功循環モデル」によると、組織に成功をもたらすためには、すぐに「結果」を求めるのではなく「関係の質」こそが大切であると言います。メンバー間の相互理解や信頼といった「関係の質」を高めると、「思考の質」が高まり、自発的にチャレンジをする「行動の質」が高まり、結果として成果が出る、つまり「関係の質」がすべての起点になってつながるのだ、というメカニズムです。

ビジネスやアカデミアのトレンドから見ても、これからの複雑で不確実な時代を生き抜くために考えなければならないのは、異なる文脈の中の多様な価値観を互いに尊重しながら、いかにして人々とよい関係を築き、ともにゴールに向かって協力していけるか、ということにありそうです。 それでは、こうした他者理解や共感力を高めるには、現状の学びの場において どのような取り組みが効果的なのでしょうか?

体験による学びが子どもに気づきを与える。問題や疑問が生じるたびに、子どもたちは自分で考え、話し合い、答えを探っていく。

先生より子どものほうが、グループ学習の効果を高く評価。

そのひとつとして、「グループ学習や体験型の学び」の機会を、これまで以上に最大限に活用していくことが挙げられます。今回、私たち博報財団こども研究所が行った「こどもと地域調査」の結果(図3)によると、子どもたちの半数近くはグループ学習によって「友だち同士で助け合うことが増えた」としており、「相手の意見をきちんと聞けるようになった」「意見が違っても話し合えるようになった」という子どもも約4割存在します。ただし、「たくさんの意見や考えをまとめられる」とするのは25%と少なく、ここにはハードルがあるようです。互いに話し合う段階をひとつ先に進め、対立を調整し解決する力を身につけること。この対立をマネジメントする力は、子どもに限らず、いま、まさに大人の社会において強く求められている能力と言えます。

また、グループ学習に対する子どもと教員の意識の差を見ると、子どもたちのほうが、先生の実感をはるかに上回る効果を感じているようです。

図3 出典:博報財団こども研究所「こどもと地域調査」2016年
図3
実践

グループワークの工夫、そして、実践・体験からくる学び。

さらに、今回の共同研究プロジェクトを通じて、いくつかの重要な要素が見えてきました。

ひとつ目は「グループワークの工夫」によってアイデアと対話の質が高まるという点です。プロジェクトでは、声の大きい一部の子どもを中心に進めるのではなく、一人ひとり、全員の声をしっかり集めて、異なる意見の中からひとつの解を導くことを大切に、グループワークの進め方やツールにさまざまな工夫を行いました。たとえば、声の小さい子の意見もみんなが集中して聞けるように、「動物カード」を使った練習を授業の最初に導入しました。そして、「そうじ大会を楽しくするアイデアを考える」時間には、まず一人ひとりが付箋に自分のアイデアをしっかり書き、その意見に互いに耳を傾け、聞き合うことを徹底しました。その上で、みんなで最も効果的と思うアイデアを、その理由を話しながら3つに絞り、さらにひとつに絞るというワークを「ピラミッド法」で進めました。「そうじ大会にミッションがあったら、地域の人も自分たちも楽しめるんじゃないか」という、今回の企画のひとつの核は、こうした中から生まれました。当初は、十分な議論のないままに、すぐに多数決で決めて終わり、といった光景が見られましたが、一人ひとりがしっかり意見を話す時間を持ち、自由にアイデアを出し、そして「なぜそのアイデアがよいのか」「気になることはあるか」など質問を繰り返し深めていく中で、子どもたちの中に、お互いの意見を尊重することの大切さや、みんなでとことん話し合って結論を出すことの楽しさに、確かな実感が芽生えたようです。さらには、「キャラクターのついたゴミ袋」と「ミッション」を両方やったら、もっと楽しいそうじ大会になるのでは?といった、アイデアとアイデアをつなげることも、こうした対話の中から生まれました。このような、難しい課題を自由な対話の中から生まれたアイデアで突破することこそ、これからの社会に求められる重要な力ではないでしょうか。

授業の最初に「動物カード」を使ったミニワークを行った。そうじ大会への意気込みを動物にたとえて自由に話す。お互いの意見を傾聴する練習にもなる。

2つ目は、「実践・体験からの学び」です。象徴的なのは、そうじ大会の2日前に運動場で行ったリハーサル。そうじ大会の企画チームでリーダーシップを発揮するりゅうたさんは、この日もみんなに次々と指示を出しながらがんばっています。

でも、実際にやってみると、頭で考えているようにはうまくいかないことばかり。どこに並ぶのか? 受付は誰がするのか? 配るものは何だっけ?と、あちらこちらから質問の矢が飛んできます。「イメージしていたのと全然違う」「本音、そうじ大会延期したい......」。そんな声もこぼれます。その中で、子どもたちはお互いに協力して、みんなで動かないとそうじ大会ができないことを肌身で感じます。

本番までにやるべきこと、改善することの提案が次々と自然に子どもたちの口からあふれてきます。リハーサルの最後には「当日は今日の反省を活かしてがんばるけど、企画チームで忘れていることがあれば、みんなも教えてください」とりゅうたさん。自分ひとりで頑張っても限界。クラスの仲間を信頼し、しっかりコミュニケーションをとりながら協力すること。大きな課題に取り組むには、チームワークが不可欠。このことを、りゅうたさんとクラスの全員が感じた瞬間でした。

大会リハーサルでは、想像していたよりもずっと当日の進行が複雑だと判明。リーダー格のりゅうたさんも、みんなと協力し合うことが大切だと気づく。
授業後の「振り返りシート」から。学期のはじめには1~2行しか書いていなかった児童が、授業が進むにつれてたくさんの文量を記載するように。
考察

ことばの力が高まると、他者との理解・共感力が高まる。

こうしたグループワークや体験からの学びを通じて、子どもたちの「ことばの力」が高まったことが、自分とは異なる考えを持つ多様な人と向き合う力、協力して物事を進める力につながっていると言えそうです。

自分の意見を相手にしっかり伝える→話し合う→実践するという作業を、繰り返し繰り返し行うことで、子どもたちの「ことばの力」(感じる力・考える力・伝える力)は飛躍的に高まります。「巴きら」の時間では、毎回の授業の最後に子どもたちが必ず「振り返りシート」を記入しますが、この取り組みもまた、そのときに気づいたこと、感じたことを言葉にして表現し、思考を深める重要な機会となっています。実際に、この4ヶ月間の取り組みの最初と最後で比べると、「振り返りシート」に書く文字数が格段に増え、学んだことを自分事として深めていった子どもの姿が見られました。

自分の気持ちを言葉にして適切に表現し、相手の言葉も適切に理解することができるようになったとき、そこには、お互いの理解と共感が生まれるのではないでしょうか?

また、頭で考えただけでは解決できない問題に直面したとき、身体的にみんなで同じひとつの体験をし、ともに乗り越えるという共体験によって、子どもたちの共感力や一体感が醸成されていきます。他者を理解し、共感力を高める学びとは、こうした要素からも深められると言えそうです。

グループワークでは、さまざまなフレームワークを使用。写真は「ピラミッド法」。多様なアイデアを分類・整理しながら、ベストのアイデアまで絞っていく。
ひとりでは考えることも、できることも限界がある。
チームでの学びと体験が、他者理解・共感の力を育てる。
PAGE TOP