メニューボタン
  1. HOME
  2. 研究テーマ一覧
  3. テーマ型調査「みらリポ2017」
  4. アンケート篇05 連載第3回「グループ学習について」
テーマ型調査
「みらリポ2017」

アンケート篇05
連載第3回「グループ学習について」

2017/09/25 カテゴリ:
アンケート編

2020年度より全面実施される小学校の新学習指導要領では、子どもたちが「学習内容を人生や社会の在り方と結び付けて深く理解し、これからの時代に求められる資質・能力を身に付け、生涯にわたって能動的に学び続けることができるようにする」ための学び方の改善の方向性として、「主体的・対話的で深い学び」の実現が挙げられています[参照:文部科学省「小学校指導要領解説 総則編」(平成29年6月)]。

本稿では、「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて、既に行われている取り組みの現状を把握するという視点で、グループ学習(アンケート上は「2人以上のグループになって、友だち同士で教え合う勉強のこと」と定義)の実態や関連する意識について分析した結果をご紹介します。

グループ学習の実施状況

今回アンケート調査を実施した東京・大阪・青森・高知の小学5・6年生800名のみの状況となりますが、何かしらのグループ学習を経験している子どもは全体の85.5%で、頻度は平均すると月に9.2回(うち、毎日=22.4%、週1回以上=46.2%、月に1回以上=24.8%)。グループ学習を経験した科目は、「総合学習」が69.7%、「学級活動」が57.0%、「国語」が50.3%と、唯一の正解を導くよりも、自由に意見を交換することができる科目での実施が多いという傾向が見られました。

<子ども調査>
Q.学校で、あなたはグループ学習や協働学習をすることがありますか?
図1
<子ども調査>
Q.どのくらいよくグループ学習をしていますか? いちばん近いものにひとつだけ○をつけてください。
※グループ学習をすることがある人のみ回答
図2
<子ども調査>
Q.何について、グループ学習をしますか?あてはまるものすべてに○をつけてください。(○はいくつでも)
※グループ学習をすることがある人のみ回答
図3

グループ学習の効果

そういった中で、子どもたちはグループ学習から何を得ているのでしょうか? 子どもたちに、グループ学習から感じる効果をたずねた結果が図4です。

<子ども調査>
Q.グループ学習をすると、あなたはどのように感じますか?あてはまるものすべてに○をつけてください。(○はいくつでも)
※グループ学習をすることがある人のみ回答
図4

まず、アンケートのトップで特に高く挙がるのは、「グループの人と仲良くなった」(62.3%)、次いで「友だち同士で助け合うことがふえた」(49.9%)と、友だちとの関係性に関することです。その次に「友だちから教えてもらった時に、学んだことがよく分かるようになった」(45.6%)、「学んだことが、よく分かるようになった」(44.9%)と、学習効果に関することが続きます。スコアは僅差ですが、その後に「相手の意見をきちんときけるようになった」(41.5%)、「人と意見がちがう時でも、話し合えるようになった」(41.5%)、「自分の意見が持てるようになった」(40.2%)など、博報財団こども研究所が重視する「ことばの力」のうち「表現する力」「考える力」に関することが挙がり、一段落ちたところに「学ぶことが楽しくなった」(30.3%)と学習意欲の向上が続きます。

グループ学習を経験した子どもたちの過半数が実感している効果は、「友だちとの関係性」の向上に関することのみです。冒頭で述べたように、新学習指導要領の「主体的・対話的で深い学び」への期待が、授業内容の質の高い理解(≒学習効果)、これからの時代に求められる資質・能力(≒「表現する力」「考える力」)、そして生涯に渡る能動的な学びの姿勢(≒学習意欲)にあることを鑑みると、現状のグループ学習にはまだ改善の余地が大きいと言えるかもしれません。

男女比較

ちなみに、この結果を男女別に見てみると(図5)、「グループの人と仲良くなった」「友だち同士で助け合うことがふえた」「友だちから教えてもらった時に、学んだことがよく分かるようになった」「相手の意見をきちんときけるようになった」「人と意見がちがう時でも、話し合えるようになった」など、協調性や助け合いに関する項目については、男子よりも女子の方が5~10pt高く実感しているという傾向が見られました。こうした、「男子よりも女子の方が協調/同調的」という傾向は、「ことばの力」 「ともに生きる力」に関する調査結果の分析とも共通しています。

<子ども調査>
Q.グループ学習をすると、あなたはどのように感じますか?あてはまるものすべてに○をつけてください。(○はいくつでも)
※グループ学習をすることがある人のみ回答
図5

同じ質問を、アンケートに回答した子どもたちと所属する小学校は異なりますが、全国の教員にも投げかけています。その結果は、子どもたちと教員との間で大きく異なっていました(図6)。

まず、子どもたちが実感しているよりも、教員は「友だちとの関係性」の向上を実感しておらず、その評価は「学習効果」の向上と同程度に下がります。「表現する力」「考える力」の向上については、子どもたちの実感の半分程度しか教員は実感できていません。

<子ども調査>
Q.グループ学習をすると、あなたはどのように感じますか?あてはまるものすべてに○をつけてください。(○はいくつでも)
<教員調査>
Q.グループ学習を行うことによって、あなたが受け持っているクラスの児童たちに現在どのような効果が表れていると感じますか。あてはまるものをいくつでも選んでください。
※いずれも、グループ学習をすることがある人のみ回答
図6

教員が最も効果を実感しているのは「友だちに教えている時に、学んだことがよく分かるようになった」(教員=44.6%、子ども=30.0%)で、この項目のみ、子どもと教員の間でスコアが逆転しています。似た内容で、子どもたちの実感として上位に挙がるのは「友だちに教えてもらった時に、学んだことがよく分かるようになった」(子ども=45.6%、教員=38.5%)です。クラスの中で、友だちに教えてあげられるくらいに理解が進んでいる子どもは、相対的に少数である場合が多いと考えられます。一つの推測になりますが、この結果は、そういった子どもたちを評価している教員の実感と、クラス全体をおしなべた際の子どもたちの実感の差ということなのかもしれません。

上記を含めたギャップ全般に対して、解釈のヒントとなりうるデータも得られています。ここまで見てきた「グループ学習から感じる効果」の項目について、教員に対してのみ、「効果を実感するもの」に加えて「効果を期待するもの」も聴取しています。以下のグラフ(図7)は、教員の「効果の期待」が高い順に項目を並べ直し、その結果に「効果の実感」の結果を重ねたものです。

<教員調査>
Q.あなたが受け持っているクラスの児童たちがグループ学習を行うことによって、児童たちにどのような効果が表れることを期待していますか。あてはまるものをいくつでも選んでください。
Q.グループ学習を行うことによって、あなたが受け持っているクラスの児童たちに現在どのような効果が表れていると感じますか。あてはまるものをいくつでも選んでください。
※いずれも、グループ学習をすることがある人のみ回答
図7

ここから、教員は、グループ学習の効果に対する期待として、「友だちとの関係性」や「表現する力」「考える力」の向上よりも、「学習効果」の向上への期待が大きい傾向にあることが分かります。教員の大きな役割の一つは、子どもたちに教科の内容を教えることであるため、この結果は自然なものと感じられます。

この結果に基づいて、先ほどの子どもと教員の間でのグループ学習の効果に対する実感のギャップ(図6)についての解釈を考えると、この学習効果の向上に対する強い期待ゆえに、教員が子どもを見るときの視点にバイアスがかかっているということなのかもしれません。

新学習指導要領の内容に立ち戻りますが、これからのグループ学習(≒「主体的・対話的で深い学び」)には、学習効果の向上に加えて、学習内容を人生や社会の在り方と結び付けられるような質の高い理解、これからの時代に求められる資質・能力(≒「表現する力」「考える力」)の育成、そして生涯に渡る能動的な学びの姿勢の獲得が期待されています。それらの実現に向けて、こども研究所としても、グループ学習をより良くするためのヒントや方法を探求していきたいと考えています。

次回は「小学校と地域との関わり」についてリポートします。

新学習指導要領は、「社会に開かれた教育課程」を実現するという理念を掲げています。最も身近な社会の一つである「地域」と小学校は現状どのように関わっているのか、そしてその関わりは子どもたちにどのような影響をもたらしているのかについて、アンケート結果をもとに分析します。

PAGE TOP