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テーマ型調査
「みらリポ2017」

アンケート篇03
連載第2回「ともに生きる力」

2017/08/08 カテゴリ:
アンケート編

博報財団こども研究所の母体である博報財団は、未来を担う子どもたちにとって重要な力として、「ことばの力」と「ともに生きる力」を育成することへの貢献を、ビジョンとして掲げています。前回の「ことばの力」に続いて、今回は「ともに生きる力」について、「こどもと地域調査」の結果からご報告します。

まず、博報財団こども研究所では、「ともに生きる力」を「自己肯定感」と「他者の理解と尊重」の2つの要素から成り立つものと考え、下記のように定義しました。

「自己肯定感」
:自分らしさと自信を持つこと/自分を大切に思えること
「他者の理解と尊重」
:他者を大切にできること/多様な価値観の他者を理解し関係を築けること
「ともに生きる力」
:多様性、複雑性の社会の中で、自分も相手も大切に共に生きること

そして、「こどもと地域調査」の中では、「自己肯定感」「他者の理解と尊重」を図る指標として、全部で11設問からアンケートを行い、それぞれ「あてはまる/ややあてはまる/あまりあてはまらない/あてはまらない」の4段階で評価していただきました。

果たして、今の小学5、6年生の実態はどうなっているのでしょうか?

子どもの「自己肯定感」と「他者の理解と尊重」

今回調査を行った小学5、6年生の全体傾向をみると、「自己肯定感」は5設問平均47.0%、「他者の理解と尊重」は6設問平均45.0%となっており、各設問に「あてはまる」と答えているのは、およそ半数弱の水準であることが分かります。

「自己肯定感」については、「今の自分が好き」(32.6%)が、「自分という存在を大切だと思う」(49.9%)、「自分の個性を大切にしたいと思う」(53.6%)など他の設問と比べて顕著に低く、はっきり自分が好きと言えるのは3人に1人という状況が見て取れます。自分を大切に思うことと、自分が好きと思うことの間には異なる認知構造があるのか?このデータひとつからも、いくつもの問いがわいてきます。また、「他者の理解と尊重」については、「周りの人が困っている時は声をかけたり手助けをしたりする」(50.5%)、「自分一人では難しいことも皆で力を合わせればできると思う」(58.1%)にみるように、互いを思いやり、協力することの意義について過半数が認識しています。しかし、一方で「自分とは違う考え方の人にも興味が持てる」(36.0%)、「違う考えがあるときも話しあって答えをみつけられる」(32.3%)といった、異なる意見をまとめて新たな答えを見つけることはハードルが高く、3割強という水準になっています。

<子ども調査>
Q.ふだんのあなたの考え方にどれくらいあてはまるか、それぞれひとつだけ○をつけてください。(あてはまる/ややあてはまる/あまりあてはまらない/あてはまらない  ○は一つ)
図1

昨今、企業の経営課題として「ダイバーシティの進展とその対応」が注目されていますが、世の中全体でのダイバーシティが進み、価値観の多様化は今後ますます進むことが予測されます。これは大人の世界の話に限らず、子どもの世界においても同様のことが起こっているものと推察されます。-異なる価値観や考え方の人とどうやって合意点を見い出しながら、互いに幸せな社会を築き上げていくのか- OECDによる「キー・コンピテンシー(主要能力)」は、21世紀に重要な能力として3つのカテゴリーを挙げ、そのひとつに「多様な集団における人間関係形成能力」を掲げています。より具体的には、「他人と円滑に人間関係を構築する能力」、「協調する能力」、「利害の対立を御し、解決する能力」です。21世紀を生きる子どもたちには、こうしたスキルを早い段階から身につけていくことの必要性が高まっているといえます。

属性による違い

次に、属性の違いによって「自己肯定感」「他者の理解と尊重」の意識に違いがあるのかをみていきます。「性別」「学年別」「居住地域別」にはどんな違いがあるでしょうか?

性別

まず、男子、女子による性別の違いです。図2にある通り、男子は「自己肯定感」のスコア、女子は「他者の理解と尊重」のスコアが相対的に高い傾向にあることが分かります。 女子は「今の自分が好き」(27.5%)という項目が男子と比べ10ptも低い一方で、「意見が合わない人の話しもきちんと聞く」(52.5%)、「周りの人が困っているときは手助けする」(57.3%)といった項目は男子を大幅に上回っています。

小学5、6年生では、男子の方が自分を大切に思い、女子の方が他者との協調性を重んじるといった状況が推察されます。

<子ども調査>
Q.ふだんのあなたの考え方にどれくらいあてはまるか、それぞれひとつだけ○をつけてください。(あてはまる/ややあてはまる/あまりあてはまらない/あてはまらない  ○は一つ)
図2

学年別

続いて、小学5年生と小学6年生ではどうでしょうか?今回、各学年400名、計800名の子どもたちを対象にアンケートを行いました。結果は図3の通り、小学5年生の方が小学6年生よりも、わずかながら「自己肯定感」「他者の理解と尊重」ともに高いことがうかがえます。

相対的に違いが大きいのは「今の自分が好き」「自分の未来は明るいと思う」「周りの人が困っているときは手助けする」の3項目です。今回の1回の調査だけでは、あくまで傾向をみるに過ぎませんが、ここで注目するのは、小学6年生になって未来への期待感や共に助け合う気持ちが弱まるとしたら、それはなぜでしょうか?

図3

内閣府の「子ども・若者白書」(平成26年版)では、日本を含む7カ国の若者の意識調査を行っており、日本の若者は「諸外国と比べて、自己を肯定的に捉えている者、将来への希望を感じている者の割合が低い」と指摘しています。このことは、日々の暮らしの環境や文化・風土の違いで自己肯定感が左右される可能性があることを示唆しています。日本社会の中で、子どもが成長する過程で自己肯定感や他者への理解・尊重力が変化するとしたら、それはどのタイミングのどんな理由で起こりやすいのか。この点は、引き続き探求したい研究テーマといえます。

居住地域別

属性別の3つめは「居住地域別」の違いについてです。今回のアンケートは、東京都、大阪府、青森県、高知県の4地域にて、各地域200名を対象に行いました。分析の便宜上、東京都・大阪府を「都市部」、青森県・高知県を「地方」としてみると、図4にみるように、ここでもわずかながら違いがうかがえます。

図4

「自己肯定感」は、全5設問で「地方」が上回り、特に「自分という存在を大切に思う」(53.0%)は「都市部」に比べ6.2pt高い結果となっています。また「他者の理解と尊重」に関する項目も、助け合い、力を合わせることの意識は「地方」の方が高いことがうかがえます。

逆に「都市部」が「地方」より高い項目は、「いろいろなタイプの人と友だちになれる」(49.8%)、「意見が合わない人の話しでも、きちんと聞く」(46.3%)の2項目です。より多様な人が集まる都市部ならではの特徴を反映した結果ともいえそうです。

「自己肯定感」と「他者の理解と尊重」の関係

ここからは、「自己肯定感」と「他者の理解と尊重」の関係性をみていきましょう。

「自己肯定感」の5つの設問のうち「あてはまる」と答えた設問の個数をもとに、回答者800名を自己肯定感のHigh層、Middle層、Low層、Non層の4区分に分けてみました。

<自己肯定感>5つの設問のうち「あてはまる」と答えた個数
 - High層: 4~5個 279名
 - Middle層:2~3個 191名
 - Low層:1個 113名
 - Non層:0個 217名
図5

結果は図5にみる通り、「自己肯定感」がHigh層になるほど、「他者の理解と尊重」のスコアが明らかに高まることが分かります。

各層別に、ギャップの大きなところに着目します。自己肯定感の設問に「あてはまる」と自信をもって答えることが1つもなかったNon層と、1つだけ「あてはまる」と答えたLow層を比較します。Low層になると、まず「違う考え方の人の話にも興味が持てる」ようになることが分かります。

また、Middle層までは「意見の違う人の話しもきちんと聞き」「違う考えを話しあって答えをみつける」ことができるのはそれぞれ44.0%、30.9%程度となっていますが、High層になると、このスコアが62.0%、49.8%まで20pt近くはねあがります。

自己肯定感が高まることで、まずは異なる意見の人にも興味がもてるようになり、さらに自己肯定感が高まると、きちんと話しを傾聴し、対立を超えた合意形成を生み出す力が発揮されていく、といった仮説が浮かび上がります。

まずは、自分を大切に思い、自分に自信をもつことが、ともに生きる力を育む上での1つの重要な起点といえそうです。

連載の第2回目は、「ともに生きる力」について、「自己肯定感」「他者の理解と尊重」の2つの視点から子どもの実態をみてきました。

次回は、学校での学びの現場に視点を移して、「グループ学習」についてリポートします。総合学習を始め、様々な場面でグループ学習が実践されている中、子ども、教員のみなさんはそれぞれ何を期待して、どんな効果を感じているのか、みていきたいと思います。

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